東洋医学の目的
東洋医学の目的は、全身の気を巡らすことによって病気の予防(未病に抑える)や、治療をすることです。その手段として漢方、鍼灸、気功があります。漢方の場合は、気の滞りがどこにあるかを診察により見つけ、その滞りの解消に必要な生薬の組み合わせを考えます。
東洋医学はデトックス重視
東洋医学では、またデトックスを重視します。人間は食べ物を取り入れて人間にとっての毒になるものを便や尿や汗として体外に排出します。排出できなければ人間は死んでしまいます。同様に心に入ったその方にとって害になるものを心から排出できないと、心身の症状として現れます。漢方薬で外に出したり、紙に書いたり、布団をかぶるなど声を外に漏れないようにして大声で叫ぶ、ボクササイズなど身体言語で外に出す等、いろいろな方法で心から外に出すことが大切です。
西洋薬と漢方の違い
1)西洋薬は、風邪にはこの薬、高血圧にはこの薬というように、ある程度ワンパターンの処方です。漢方薬では、その方の体質や環境によって薬が変わってきます。
例えば風邪をひくとよく葛根湯と言われます。確かに風邪のひき始め、ゾクゾクして頭痛や喉の痛みが出る1日目か2日目に有効な薬です。
しかし体力がなく胃腸の弱い方(虚証の方)には向きません。
そうした方には、桂枝湯や、麻黄附子細辛湯等を用います。
さらに症状が悪化した場合は、その方の症状や体質に合わせて、また別の漢方を用います。
2)漢方治療では、身体全体がどのような状態になっているのか、どうすれば気がうまく流れるのかを考えて治療するために、全身の気がうまく巡る事により、他の症状も改善して来ます。例えば先ほどの桂枝湯ですが、虚症の方の風邪の初期に使いますが、中に入っている桂枝という生薬は、後頭部から首の辺りの気の流れを良くするため、肩こりや忙しくて、目が回るといった時の眩暈にも効きます。
治療の実際❸
60代の女性、長年頭の汗の治療に、あちらこちらの医療機関に通院しましたが、良くならず、漢方で治療したいと来院されました。
舌の緊張が強く、左右の胸脇の詰まり、肩や首の緊張、頭部の気の鬱滞が見られました。この方の身体所見から、過緊張が続いて気が上にのぼって下がらず、同時に身体の水も気と共に頭に集まったものと思われます。頭が水膨れ状態になってしまい、そのために頭部の余分な水を汗として体の外に出し、同時に過剰な陽気から脳を守るために汗で冷やしているのだと考えました。
「ずっと緊張して過ごして来られた結果で、汗は必要な症状だったのだと思います。緊張をほぐし、肩や首も楽になるお薬をお出しします。」と柴胡桂枝乾姜湯を処方しました。
次の来院時に、夫が実はアル中で、結婚してからずっと言葉のD Vを受けていて、24時間緊張のしっぱなしだったことを話されました。肝臓を悪くして、夫はアルコールをやめましたが、やはり夫への緊張は続いていたことに、初めて気がついたとのことでした。夫に、「あなたのせいで、ずっと緊張して、頭に汗をかくようになった。」と初めて夫にはっきり言えてスッキリしたとのことでした。薬だけでなく、症状の原因に気がつき、夫に言えたことも症状の軽快に繋がった一例です。
治療の実際❹
ある不安障害の患者さんが、妊娠を希望しているために今服用している西洋薬を漢方薬に変えて、妊活したいという希望で来院されました。診察により、不安や緊張により、気が上って下がらず、両側胸脇苦満やみぞおちの痞えや左の胸脇に滞りが見られたために、四逆散と二陳湯を処方しました。そのために緊張がほぐれてリラックスし、子宮底が下がったためか、処方後10日で妊娠されました。
たまたま不安障害の症状をとるためにお出しした漢方が奏功して2次的に妊娠という結果につながったと推察されました。