こころの便秘

日本語には、気が胸に詰まった状態を表現する言葉が多くあると思いませんか?

 

「胸がいっぱい」「胸が痛む」「胸がザワザワする」「胸がモヤモヤする」「胸苦しい」「胸がドキドキする」。

 

ぐさっと突き刺さった言葉を感情でうまく処理できないとき。言い返せなかったとき。言葉に表現できなかった時。そんな時は、いわばこころが便秘状態になっています。身体にとって便秘が良くないように、こころにとっても便秘は大敵です。

 

こころの便秘の正体

東洋医学的には、この胸の部分は、「任脈上(身体の前面の真中を通る気の道筋)」の「膻中」、「玉堂」、「紫宮」、「華蓋」というツボの辺りを指します。このツボが詰まって便秘状態になるわけです。

 

こころの便秘の解消法

漢方の生薬が役立ちます。カッ香、紫蘇、薄荷、カルダモン、木香、香附子、厚朴、檳榔子などがこの辺りの気の滞りを取る働きをします。その生薬を含む香砂六君子、香蘇散、芎帰調血飲や九味檳榔湯など、その方の体質や、症状によって色々な漢方薬が気を発散したり、気を上げたり下げたりして、この詰まりを取ります。

 

40代女性のケース

通院中の40代の女性のケースを紹介します。元々うつ病で通院された方ですが、最近は安定して良い状態でした。ある日、息子さんである小学生の男の子が学校でトラブルを起こして先生に呼び出されました。そのことがきっかけでドスンと落ち込んでしまったと来院されました。診察すると「膻中」に詰まりがみられました。胸の気の詰まりを下げる働きをする香砂六君子をお出ししたところ、抗うつ剤と違って副作用なく、胸がスッキリしたとその効果にびっくりされました。

 

役に立つセルフケアの方法

こころが便秘状態だと、コンピューター上でメモリがいっぱいになっているので、クラウド上に上げたり、外付けのメモリを用いたりするように、一杯になった気持ちを心から外に出して、こころにスペースを開けることで、気持ちが楽になります。

ではどのようにしてそのこころにスペースを設けるか?溜まった心の感情をノートに記すことです。考えるときは、紙の上で考えること。頭の中だけで考えると、エンドレスになって寝られなくなってしまうこともあるので、一旦頭の中から出して紙の上で考えると良いと思います。ノートに書いて、ノートを閉じたら、とりあえず、休止です。そうして頭と心を休ませましょう。

 

あとは気を発散するペパーミントやカルダモンの香りを嗅ぐなどアロマを用いて、気を発散させることも効果的です。

 

こころが便秘状態だと思ったら、こころに溜まっているものを少しずつでも外に出すことが大切です。まずは可能な範囲ではじめてみてください。